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ニコライ・ホジャイノフ 

 

昨年のショパンコンクールの配信で異彩を放っていたホジャイノフ、本来コンクール前の2020年に開催される予定だったリサイタルが幾度もの延期を経てやっと開催された。

 

ステージに登場したホジャイノフは燕尾服姿が決まっていて歩く姿もバレエダンサー?と見まごう美しさ。コアなファンがいることは知っていたけれど映像から予想していた以上にスター性のあるピアニストだなぁというのが第一印象。

 

ピアノに向かう姿も自然で、盤石なテクニックを持ちながら決して演奏効果を狙う派手なパフォーマンス、無駄なジェスチャーもない王道のピアニズム。

 

特に驚いたのは低音部の左手の音色の豊かさ。多彩さ。

ハーモニーが豊かだから右手(メロディー)は余計なことしなくても良くて、細かな点ではそう来るか!そう読んだか!という意外性も見せつつも全体的にはつじつまが合っていて、心地よくいつまでも聴いていられるのだった。

 

オールショパンプログラムの後、アンコールではラフマニノフ、スクリャービンのエチュードをペロッと弾きこなすわ、ホジャイノフに自身によるオペラの即興を披露するわ、計10曲。本編とは違ったエンターティナーの顔も見せ、客席はスタンディングオベーションの大盛り上がり。

 

もう一度聴きたいと思わせる演奏家って、聴衆と交信しながら一緒に盛り上がっていくタイプと、聴衆の存在を忘れて没入していく演奏家に聴衆が心奪われるタイプがあると思うのだけど、ホジャイノフ、どちらも持っている?

 

久しぶりに「すごかったよ!」と誰かに言いたくなるピアノリサイタルでした。